◆いつか立ち上がると 信じて ◆誰かの役に立てることが心の癒し ◆冬の暮らしを守る支援 ◆2千2百万人の悲しみ ◆戦闘の始まり ◆戦闘に巻き込まれた ?! ◆「避難する」ということ ◆避難する人々の上に 降る悲しい雨 ◆支援現場での葛藤と 選択 ◆終わりなき苦悩。 漂流する難民・避難民 ◆正確な情報とは? ◆働く喜び! ◆贈る喜び ◆習うより慣れろ ◆道なき道をゆく人びと ◆終わらない戦争 ◆小さいけれど大切な こと ◆お節介のすすめ ◆思い浮かぶ豊かな自然と人々の顔 ◆柔らかい会議 ◆何を基準に募金を しますか? ◆「おはなし隊」が終わります ◆平和を構築する ジグソーパズル ◆JENとわたし ◆変わらず生き続けている理念
◆プロフィール
1年前、カメラに背を向けた女性たち
人参、ほうれん草、玉ねぎ、トマト、食用油、洗剤、洗濯バサミ……。買い物に出るときはメモを持つ。病院に行ったら、診察を受けたい科の診察室を探して順番を待つ。私たちの日常は文字を読めることを前提に成り立っている。 もし読み書きできなかったら、私たちの生活は一変するだろう。 電車に乗っていても、どこにいるのかが判らない。ひたすら車内放送に耳をすますか、だれかに教えてもらうしかない。電車を降りてもどちらに行くのか、エレベーターに乗ってもどのボタンを押したらいいのか自分では判らない。
識字教室を実施する地域は、急な坂の途中にある
去年の2月、アフガニスタンを訪問した時、そんな困難に直面している女性たちに出会った。40平方メートルほどの部屋に集まったのは30人足らず。男性は長老と私を案内してくれたJENの職員だけ。彼女たちは、日本でも最近知られるようになったブルカをかぶっている。ブルカは女性をよそ者や敵の目から守るためのものだという。家族の様に信頼している長老とJENの職員の前では、女性たちも心を許し、花嫁のベールのようにブルカを後ろにたらして顔を見せてくれたが、カメラを向けると、みんなブルカをさっと顔の前におろして背を向けた。 イスラム教徒の男性たちは女性を守るために、時には蛮勇といっていいほどの男気を発揮する。だが一方で女性に「守られるべきもの」として振舞うことを求める。だから女性が一人で外出したり、勉強をすることを、快く思わない人が多い。そんな中で彼女たちは、裁縫と刺繍、読み書きと基礎的な計算だけのJENの自立支援プロジェクトに通ってきたのだ。
自ら作り上げた裁縫製品を手に
今年2月、1年ぶりに再びカブールを訪れた。9か月半のプロジェクトは既に終わっていたが、みんな集まってくれた。彼女たちはもう生活でも文字を使い始めていた。最近に、何を書いたか訊いてみると「子どもの靴を買いに出かける夫に靴のサイズを書いて渡した」「一人で病院に行けた」「メモを書いて買い物に行くので時間が短縮できるようになった」という答えが返ってきた。彼女たちは相変わらずはにかみ屋さんだった。カメラを向けると、やはりブルカをかぶって顔を隠した。だがカメラに背を向けるのではなく、自分たちが刺繍したシャツを誇らしげに掲げてくれた。
顔を覆いながらも誇らしげに作品を見せてくれた
五十嵐ジュンに少し似た識字の先生は、中間テストを実施したときに感激したという。単語だけでなく、文章を書けるまでに彼女たちが成長していたからだ。冬の厳しい寒さの中、素足にサンダルだけで急な坂を登って通った彼女たち。こともなげに一歩一歩進む彼女たちは、確実に何かに向かって進んでいるのだろう。
五十嵐ジュンに似た識字の先生(手前)と参加女性たち
1年足らずのプロジェクトで字が読めるようになった女性は156人に過ぎない。経済状況はまだまだ厳しい。治安回復も喫緊の課題だ。だが1人で病院に行ける女性が増えることを抜きに、この国の復興・発展がないことも確かだ。JENのささやかな支援はまだ当分続く。
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