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人生、出会いのおもちゃ箱

ステキな上司

どうせ組織で仕事をするならステキな上司に巡り合いたいし、読者のみんなにも巡り合って欲しい。そして、これが、本当に難しいのだけれど、わたしもステキな上司になりたい。
ステキな上司とは、部下の能力を「引き出してくれる人」であり、「チャンスを与えてくれる人」だと思っている。そして、大切なのは、その上司の元で素直になれる自分がいることだと思っている。いくらステキな上司でも、自分が素直でなければ意味がない。

わたしは、本当にステキな上司と巡り合えた。それは、元吉本興業の常務取締役の木村政雄氏である。木村さんと出合ったのは、22歳の新入社員の時である。厳しくて、よく「考えろ」とか「戦略を立てろ」と言われた。あまり、自分で命令するわけではなく、常に部下に考えさせる人だった。今から思えば、そのほうが命令するよりも時間が掛かる。「よく、あんなにまめに部下の面倒を見ていたなあ」と、つくづく思う。もっとも、その頃は、そのありがたみなんて全く分かっていなかった。
夜中の2時でも平気で反省会をする人だった。お酒も飲まずに、コーヒーと夜食を前にファミリーレストランでミーティングをしていた。そして、部下のひとつひとつの報告をよく聞いてくださった。今から思うと、そんな夜中のミーティングでも楽しかったのは、自分の話をきちんと聞いてもらえたからだった。その日つらくても、ちゃんとアウトプットできるところがあるというのは、すごいことだった。

だから、木村さんは、部下がどんな仕事をしているかとても良く分かっておられた。それだけに、手を抜いているところには厳しいチェックが入った。横山やすしのマネージャーをやりながら、宮川大助・花子の売り出しに夢中だったわたしは、しょっちゅう木村さんにまとわりついて、「あーだ、こーだ」と言っていた。今から思えば、自分も忙しいのに新入社員のわたしの夢物話やぐちを聞く木村さんのほうが大変だったはずだ。
木村さんは、56歳で吉本興業を去った。「僕は、常務になりたくて吉本に入ったんじゃない。おもしろいことをし続けたい」、「会社に切られるのを待つのではなく、自分から次の人生を考える50代の見本になる生き方をしたい」、そうおっしゃった。今もわたしにとっては、人生のステキな上司である。

 

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