
吉本興業には、いろんな芸人さんがいる。売れてる芸人だけでなく、何十年も売れずに芸人をやってる人もいる。そのうちの一人がパンチみつおさんである。彼は、17歳でこの世界に入って、30年間ずっと下積みで来た人である。そして、わたしも含めて吉本の中で彼を嫌っている人は、まずいない。それどころか、みんなに愛されているのが彼である。
特別贅沢はできないけれど、彼は、それなりに、ずっと、芸人として生きてきている。ブレイクはしないけれど、常にちゃんと芸人としての仕事がある。

「ひょっとして、彼にはすごいノウハウがあるのではないだろうか?」
わたしは、ある日、素朴にそう思った。そこで、無理矢理お客さんに頼んで、わたしは、彼に1時間弱の講演の仕事を入れた。
「えーっ、講演なんてやったことないですよ」
案の定、彼はうろたえた。でも、最後に彼はこう答えた。
「わかりました。何とかやってみます」
いくよ・くるよさんは、「大丈夫かいな?」と、心配した。島田紳助さんは、愛情を込めて、「みつお、仕事を断るのも勇気やで」と、彼に言ったらしい。内心、わたしもドキドキしていた。講演の内容は、「芸人から見た吉本興業」にした。
 
ところが、彼の話は、とても好評だった。私自身も、すごく感動した。彼は、30年間、与えられた仕事を文句も言わず、着々とこなしていたらしい。苦しいこともいっぱいあったけれど、全て笑いに変える力を持っていた。自分の不幸自慢をしながら、彼の哲学を語ってくれた。そして、数々のステキな言葉が彼の中にあった。
「僕は、30年間売れてないけど、まだまだ夢をあきらめてないです」
「後輩に、いっぱい抜かされたけど、一緒に良い仕事もさせてもらってます。僕にはプライドを捨てられるプライドがあるんです」
「いくら、売れなくても、僕の中に『芸人を辞める』という選択肢は無かったんです」
わたしは、彼がこれからもこの世界で生き残ると確信した。なぜなら、「何があっても生きたい行き方をもっていること」がどんなに大切かを、彼はメッセージできる芸人だからである。ぜひ、機会があれば、みなさんも、彼の話を聞いてあげてください。

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