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つなぎ卵

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ハンバーグを作るとき、つなぎに卵を入れる。ひき肉とタマネギがバラバラにならないようにするためだ。人と人の間でもその“つなぎ卵”の役は重要である。娘の貴子が小学校4年生の頃だった。私たち夫婦は夫がテレビディレクターと、両方とも放送関係。仕事柄帰りが遅い。ある夜、娘が寝てしまい、静かになった部屋で突如夫が言った。「お前たちは女同士だからいいよな。俺はどうせいつも蚊帳の外だ」。
思わず、「当たり前じゃないの」と、返事をしようと思ったが、ふと思い出したことがあった。
私は幼い頃から父が大の苦手だった。性格が合わなかったせいもあるが、母が明治生まれのワンマン夫にかなり苦労し、私に父のことをあまりよく言わなかったせいもあったのではないか。
夫は土、日にテレビ番組の本番があり、夜も遅く、娘と話す時間がない。しかし娘は、いつも父親の休みの日を気にしていたのだ。“これは私が伝えなければ”、そう気がついた私はこう言った。「あら、貴子は毎週金曜と土曜には必ず聞くのよ。パパは今度の土曜はお休み?日曜日は? って」。
夫は私の言葉に、「ふ〜ん」と気のなさそうな返事をしたが、翌日からどんなに帰りが遅くなっても、必ず娘の部屋をそっと開け、様子を見るようになり、さらに休みの日には娘の帰宅を待ち、喫茶店や野球の試合に連れて行くようになったのだ。デートの感想を娘に聞いたところ、「う〜〜ん、いいけどパパとの会話がねぇ」とのこと。いまひとつ盛り上がらないそうだ。
「さもありなん」と思わず笑ってしまったが、何とも言えず心温まる思いだった。もしあの時、「当たり前じゃないの」と言ったら、この状態はなかっただろう。そして、私のように父と娘の間は疎遠になっていたに違いない。
私が果たした“卵つなぎ”の役目にちょっぴり安堵しつつ、“家族だから言わなくてもわかるだろう”と安心してはいけない−−そう、しみじみ思ったことだった。

 

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