●夫と行く初めての中東旅行
夫が働くケニアに来てから三ヶ月が経った。ケニアに来て初めて過ごすお正月。どこへ行こうか考えた末、ナイロビから直行便のあるカイロへ行くことにした。ピラミッドとスフィンクスは、一生の内一度はぜひ見ておきたい。
夫とはカンボジアで出会い、結婚生活はイギリスで始まった。イギリスから日本、そして今はケニアにいる。結婚してからこれまで、平均一年半で移動するという旅人のような暮らしだ。イギリス滞在中は、フランスやイタリアなどヨーロッパの国々を旅行したが、中東へ二人で行くのは今回が初めてになる。
ナイロビからカイロまで飛行機で約五時間。カイロ空港に到着後すぐに車でピラミッドとスフィンクスのある町ギザへ向かった。車を走らせること約一時間、カイロの街並みを過ぎると、突然目の前に、砂漠とピラミッドが飛び込んできた。なんて巨大な建造物なんだろう。車中から眺めただけで、その存在感に圧倒されてしまった。
●交渉しないと始まらない
ギザのホテルに着いたのは午後四時過ぎだったが、すぐにピラミットの見学に向かうため、ホテルのベルボーイにお願いし、流しのタクシーを呼んでもらうことにした。日本のようにメーターがついてないので料金は交渉次第。エジプトでは流しのタクシーだけでなく、土産物屋など多くの場所で料金交渉が必要だ。ドライバーと交渉し、ピラミッドまでの往復料金を決め、いざ出発。
連れて行かれたところは、ピラミッドの入り口ではなくラクダ乗り場。そこに待ち受けていたのは身体の大きな男性。「今日はもうピラミッドに入れないから、周辺をラクダに乗って回るのはどうだ?」と話し始めた。ピラミッド群とスフィンクスは塀で囲まれており、入場時間内しか中に入ることができず、私たちが行った時はすでに閉場していた。
夫も私もラクダに乗るつもりは全くないので断ると、「なぜ?」「ラクダが嫌なら馬はどうだ?」「馬が嫌なら馬車はどうだ?」と料金もそれはないだろうと思うぐらいの高い金額を言い、あれやこれやとまくし立てながらの猛攻撃。こちらが少しでも考える態度を見せると、「OK、さぁ乗ろう」と強引に連れて行こうとする。
「強引に乗せられた」「乗った後法外な料金・チップを請求された」など、持参したガイドブックには、ピラミッド周辺のラクダ引きと旅行者のトラブルにまつわる話がたくさん載っていたこともあり、ひとまず夫婦で作戦会議をすることにした。ホテルに帰っても暇なので、金額さえ折り合えば馬車に乗ることにし、払える金額の上限を決めた。
夫は人付き合いも交渉事も嫌いで、交渉するぐらいなら高い料金を払っても良いタイプ。一方私は人とのコミュニケーションが大好きで、料金交渉は大の得意。おのずと交渉役は私が買って出ることに。
交渉はケンカをしないこと。「まけて」と言わず、自分が払っても良いという金額になるまで、ひたすら「ごめんなさい、お金がないの」と言いながら立ち去ろうとするだけでいい。たくさんまけてもらったからといって悪いと思うことはない。相手は立派な商売人、損な取引はしません。
●“束の間”のピラミッドに感激
ちょっと高いかなと思いながらも料金を決め馬車に乗り、ワクワクしながらピラミッドへと向かった。
ピラミッドは大きく、それもいくつもあり、ニョキニョキと、まさに地面からそそり立っているかのようであった。ピラミッドを成す石灰岩のブロックは、一個平均2.5トンで、それが少なくとも230万個使われているという。
「すごいね」「どうやって石を積み上げたんだろう」、巨大なピラミッドを間近に夫も私も興奮気味。しかし感激に浸る間もスフィンクスを見ることもなく、あっと言う間に出発地点に戻って来てしまった。
「これだけ?!」
夫と私は顔を見合わせてつぶやく。降りる時、御者の男性からチップを要求された。気持ち分渡したところ、チップが少ないとしつこく言われたが、内容が不満足だったこともあり、最後まで聞き流してしまった。
私は料金交渉をそれなりに楽しんでいたのだが、夫はほとほと疲れた様子。旅行中は私が料金交渉を担当するからと言っても、時間がもったいないし、その交渉を聞いているだけで疲れるからと言い、翌日からは、交渉不要だが料金の高いホテルのリムジンタクシーで観光することになった。そしてピラミッドもスフィンクスもリムジンタクシーで観光し直し、ゆっくりと感動を味わうことができた。
参考:エジプト観光局 http://www.egypt.or.jp/index.html |