●祝・初旅行
誰に話しても珍しいと言われるが、今まで家族旅行に行ったことがない。結婚して6年。息子はもう5歳になった。夫の仕事は飲食業で夜勤務のため、すれ違いの生活。朝食と夕食の1時間が唯一家族3人がそろう時。こんな生活してたら旅行なんて夢のまた夢。しかし1回くらいは家から離れて旅先でのんびり…なんて経験してみたいものだ。
1泊2日の小旅行ならなんとかなるかな? と、ふと思いついた私は、「そろそろ旅行でもしたいねぇ」と夫に持ちかけてみた。休日は家でのんびり派の夫だが、「今まで旅行したことないし、いいよ!」と乗り気になってくれた。
さて、どこへ行こう。旅行の経験がない私たちがあまりに遠くに行くのはちょっとしり込み。それほど遠くもなく、息子も楽しめるようなところはどこだろう? と話し合った結果、自然あふれる“秩父”に行くことに決定した。
ひとつ気になるのは、ペットのウサギと離れること。たかが1泊2日だが、まだ仔ウサギなので、誰もいない部屋に置いていくのも心配。そこで、初めてペットシッターに依頼した。
これで安心して旅行を満喫できるぞ。
●息子とのひととき
池袋駅から特急レッドアロー号に乗り、出発すると同時に大雨が。先行き不安になりながらも、車中では「お昼何食べる?」「ボク虫探ししたい」とか、やりたいことで頭がいっぱいの私たち。
西武秩父駅に到着すると雨も上がっていた。ちょうど祭りシーズンで、仲見世通りでは「秩父屋台ばやし」の公演もあって、たくさんの人で賑わっていた。
昼食は駅前の蕎麦屋へ。息子は大好きなざる蕎麦をみごと完食!「これ、大人の一人前だろ? お腹大丈夫か?」と心配する夫をよそに、息子は「あー、おいしかった!」とにっこり。
私たちが泊まる民宿のすぐ近くには高篠山があり、辺りは木に囲まれて空気も新鮮! 「こんなに山が近くに見えるよ」と息子は目をキラキラさせていた。これだけで秩父に来た甲斐があったな〜としみじみ嬉しさがこみ上げる。
仕事を終えて朝帰宅してから、寝る暇もなく旅行に来た夫は、「少し寝かせてほしい」と言うので、息子と私は近りを散歩することにした。
民宿の目の前には小さな川が流れており、あちらこちらに可愛らしい草花が。それにチョウやバッタやコオロギなどの虫もたくさん! 息子は虫を捕まえてはじっくりと観察。「ママ! 見て! へんな虫がいる」とはしゃいで嬉しそう。「ここに来てよかったねー。だって虫いっぱいだし、ずっとお外で遊べるから」と息子は言った。
このとき<子供はやっぱり外で遊ぶのがいちばんだな〜>と気づかされた。働きながら育児に家事をしている私と、朝から夜まで保育園で過ごす息子。自然に触れながら、虫探しして、咲いている花に目をやって…こんなふうに時間がゆっくり流れているのを感じることは、日々の生活の中ではまずないこと。気持ちにゆとりができると、普段どれだけ時間に追われながら生活していたかがわかる。<帰ったら、今まで以上に息子との時間を作ろう!> と心に誓った。
●山の幸に、花火に、ハプニング
初めての旅行ということで、その土地の料理を味わうことも楽しみのひとつだった。いよいよ待ちに待った夕食の時間。民宿の畑でとれた野菜と、目の前にある高篠山の山菜を取り入れた料理がテーブルいっぱいに並べられた。「食べきれないくらい沢山あるねぇ」と思わずつぶやく。息子は早くもデザートのメロンに釘付け。
山菜の天ぷらはサクサクで、刺身こんにゃくはゆず味噌を付けてサッパリとした美味しさ。お蕎麦や煮物に焼き魚など盛りだくさん! 私たちは思う存分秩父の味を堪能した。
夜の景色も見てみようと、夕食後3人で近くの神社に行くことにした。歩くこと数分。神社が見えてきた。だが人影はなく、それに辺りには街灯が一つもない。私は思わず「肝だめしみたいだね」と言うと、怖がりな夫は「やめろよ〜」とビビリ気味。息子も「なんかおばけ出そうだね」と言うので、このまま民宿へ戻ることにした。
帰り道、「旅行なんて行けると思わなかったね〜。本当に嬉しい」と自然と口からこぼれた。
部屋に戻ると、ドーンと音が鳴って、どこからか花火が上がった。部屋の窓を開けるとちょうど真正面に花火が見えた。秩父に泊まるその日に偶然花火が見られるなんて、なんだか得した気分! しばし花火を見ながらのんびり過ごした。それから押入れを開けて、布団を敷こうとしたそのとき、押入れから大きいクモが。「ギャー!!」と、思わぬハプニング!
明日はいよいよ、息子が一番楽しみにしていたカブトムシ捕りへ――。
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