
最近、街を歩く女性を見ていましても、ファッションはもちろん、振る舞いなどにも欧米のスタイルが定着しているように感じます。
女性が美しくなることはとても素晴らしいことなのですが、日本人としてのたしなみ、日本独特の作法まで忘れてしまうのは寂しい気がいたします。
日本には、昔から訪問の際のマナーとして、玄関に入る前にまずコートやジャケットといった上着を脱ぎ、身支度を整えてからお邪魔するというマナーがございました。しかし、欧米のマナーが入り乱れるようになり、冬の寒い時期などコートを着たまま玄関を上がる方が増えております。
それでは、せっかくの出会いも台無しです。精いっぱいの真心でお客さまをおもてなししている相手の方にも、とても失礼だと思いませんか?
訪問時には、まず自分の身を整えることが大切です。
もう一つ、訪問時のマナーで陥りがちなものとして、玄関からお宅へ上がるときの靴の脱ぎ方がございます。
靴をそろえることを意識し過ぎて、迎えてくださっている方に背中を向けて上がろうとしたり、靴を玄関の真ん中に置いてしまったりすることがあります。玄関を上がるときにはそのまま真っ直ぐに上がり、それから振り向いて、自分の靴が他の方の邪魔にならないように直してそろえます。
ここで大切なのは、立ったまま靴に手を伸ばすのではなく、きちんと座ること。たとえば何か物を落としたときも、すっとしゃがんで拾う方が女性らしく見えますよね。
お部屋に通された後ですが、どこに座ればいいのか分からない場合は、勧められるまでは下座で待たせて頂きましょう。下座とは通されたお部屋の入り口付近を指します。あらためて相手の方が案内してくださるまでは、座布団などが用意されていても使わずにいる方がいいと思います。
案内して頂いたら、まずは迎えてくださった方に対し、「本日はお招き頂きありがとうございます」など感謝の気持ちを込めてごあいさつをしましょう。そしてここで持参した手土産などを渡します。ただ差し出すのではなく、「季節柄、メロンがおいしそうでしたのでご家族の皆さまでお召し上がりください」など一言そえるのがポイント。何だか分からないものを渡されるより、受け取る方もうれしいですよね。
私も仕事柄、お宅にお呼ばれする機会が多いのですが、必ず何か手土産をお持ちします。その時、お店の紙袋のままではなく、できるだけ自前の風呂敷で包むようにしています。
マナーの本ですと、紙袋や風呂敷に包んだまま渡すようなことが書いてありますが、お渡しするときに風呂敷を解いて、または紙袋から出して、その上に手土産を乗せてお出しするのがよいでしょう。時間の都合でどうしても玄関先で失礼するような場合はそのままでもよろしいかと思いますが、そんなときも両手を添えて渡すようにしましょう。
もし畳のお部屋ではなく椅子席に通された場合でも、足を組んだりはせず、きちんと足をそろえて座る方が美しく見えます。その緊張感が、相手の方にいい印象を与えるのです。「どうぞ足をくずしてください」と言われても、ある程度の緊張感は持ち続けること。体にいつも、ほどよい緊張、“芯”を入れておくことが大事です。
親しい友人を訪問したときなど、ついお話に花が咲いて「もうこんな時間……」というようなことがあるかと思います。事前にお約束をしていたとしても、お邪魔する時間は30分ほどが適宜です。長くても1時間ぐらいで退席できるよう心がけておくことも、大切なマナーです。
帛紗(ふくさ)や風呂敷同様、外出時にカバンに忍ばせておくと便利なのが「懐紙(かいし)」です。懐紙とはお茶席でお菓子を取り分けたり、お茶碗の縁を拭くときに使用する紙のことですが、昔の人はこの紙を着物の懐に入れて持ち歩いていたため、懐紙と言われるようになりました。懐紙を何枚か持っていますと、出されたお菓子を食べ切れなかったときに包んで持ち帰ることもできますし、お化粧直しにも役立ち、とっさの時のメモ代わりにもなります。
普段から風呂敷や懐紙を持ち歩いていると、大人のマナーが身についたワンランク上の女性として見て頂けるのではないでしょうか。
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