
お茶の精神に「和敬清寂(わけいせいじゃく)」という言葉がございます。「和」とはハーモニーであり、お互いに心を開き、分かり合うことです。「敬」とは相手を敬う心。「清」には心身共に清らかであるという意味があり、「寂」とはどんなときも動じない心を指します。
この「和敬清寂」は、お客さまをおもてなしする上で、とても大事な“心”を教えています。中でも「清」がキーポイント。お迎えするときに身だしなみを整えるのはもちろん、お客さまに気持ちよく過ごして頂けるよう、玄関先やお部屋を掃除しておくことも大切です。
お客さまに出す“おしぼり”もそう。お茶事では、「蹲(つくばい)」という手水鉢が置かれ、きれいなお水が用意されます。お客さまは茶席に入る前に必ずそのお水で口をゆすぎ、手を洗います。神社などでも本堂の前に清めの水がありますよね。おしぼりも同じです。外からいらっしゃるお客さまに汗やほこりといった不快なものを落として頂き、気持ちよくお茶を飲んで頂くために用意します。
次は「敬」です。相手を敬うということですが、難しい意味ではなく、お客さまに何をお出ししようか、お茶とコーヒーならどちらが好きか、甘い物をお出ししても大丈夫かなど、その方の心を汲むということです。
出す順番としてはまずおしぼりをお出しし、そしてお茶とお菓子の順に。出し方はお客さまの右側に回り、向かって左からお菓子、お茶、おしぼりとなります。これも、ただ形を覚えればいいのではなく、どういう順で置いたらお客さまは飲みやすいのかと考えることが大切。お菓子を左に置くのも、お茶を飲む時に右手を使う方が多いからですが、もし左利きの方であれば、お茶を左に置く方が親切ですよね。相手を理解しようとする気持ち、それが「敬」であり、「和」にもつながっていくのです。
そして、お茶を出すときはできるだけ両手を使いましょう。片手でどんっと出されるよりも、両手を添えて「どうぞ」と出された方がうれしいですよね。
もちろん、お茶やお菓子はお盆に乗せて運びます。和室であれば、お客さまの前で一度きちんと座り、お盆をひとまず畳の上へ置いてごあいさつをします。それからお茶を出しましょう。じゅうたんやフローリングの洋室であれば必ずしも座る必要はありませんが、テーブルの隅にお盆を置き、そこから一つずつお出しするようにしましょう。
流れ作業にならないよう、ひと呼吸置く動作が大切です。せっかくなら、お越しくださった方に喜んで頂きたい、その相手を思う“プラス1”の心がマナーではないかと思います。
一見、余分に思えるひと手間で、動作は見違えるほど美しくなります。
先ほど申し上げた両手を添えるという行為も、女性らしい素敵なしぐさだと思いませんか。手を添えると、自分の体も自然とその物に向きますよね。その姿が女性特有の美しさです。
お客さまをおもてなしする際は誰でも緊張するもの。ときには、お茶碗をひっくり返してしまったり、出す順番を忘れてしまったり、おかしな位置に置いてしまったりと、間違えるときもあると思います。そんなときこそ慌てずに、ひと呼吸置いて落ち着いてください。それが、どんなときにも動じない「寂」の心です。
マナーを勉強する本はたくさんありますが、あくまでも参考例であって、「こうでなければならない」という決まりはありません。「和敬清寂」と「プラス1」の心を大切に。あなたなりの“出会い”を演出してください。
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