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桃の節句もすぐそこですね。長い間待ちわびた春の訪れです。このシリーズで、皆さまと出会って1年、「美しく生きる」の意味とコツが、少しは解っていただけたことと存じます。
この1月、ある華燭の宴にまねかれました。
花嫁と花婿は、私しの主宰する月1回の“お茶の会”でお茶のおけいこをしている青年です。
1月上旬だというのに、3月の暖かさで、朝から雲ひとつなく青く澄み渡った空の色は、まるで露草のようにきれいでした。
ホテルではなく、ある旧い屋敷での宴でした。
その日の2人の衣装は、新郎の祖父母様が結婚式のとき装っていた花嫁衣裳とモーニングでした。
半世紀以上経っても、なお輝いて、きれいでした。
何よりも、ただ表面だけの華やかさを身をまとうのではなく、2人の生き方の美しさが気品となって、周りの全てをつつんでいました。
どんなに忙しい時も、2人は一度も、おけいこを休んだことはありません。
たった30分でも時間を作って一服のお茶を点て、心をこめてお互いにもてなしていました。そのけなげさは、ほんとうに美しく私の目には映りました。
“美しく生きる”というひとつの形がここにあると思いました。
美しいとは、とても清々(すがすが)しく、凛(りん)としているものです。
「忙中閑」とは、忙しい中のひとときの閑(ひま)とか閑(しずけさ)という意味ですが、それだけではありません。
「忙しい」という字は「心」を「亡(うしな)う」と書きますが、自分が心を亡うほど忙しい時だからこそ、一瞬でも、自分を取り戻す時間を作るという意味でもあるのです。
あなたひとりだけではありません。忙しいのは……。
現代人は、ほんの少しの心のゆとりさえ忘れています。“心”さえあれば、1ヶ月のうちの30分か1時間、自分の心を清め、豊かにする時を、作れないはずはありません。
「まあ……いいや。忙しいし、いつかまた……」と思う人と「忙しいけど、少しでも時間を作ろう」と実践する人。ほんの少しの心の違いが、人としての生き方に大きく影響することに気づかない人が多いのは、とても残念です。
「偉大な人は、小さな事を、きちんとできる人だ」という言葉があります。
せっかくのすばらしいチャンスを、みなさん、のがさないで下さい。きのうとは違った感動の世界に出会えるかも知れないのですから……。
そしてチャンスがあれば、ぜひ、日本の文化にふれて下さい。
日本の文化は、不思議な力と感動を秘めてます。あなたをきっと美しくステキにしてくれることでしょう。私しは、今まで多くの人に、日本の文化のけいこごとを勧めてきました。
断りの文句はみな同じです。
「時間とお金ができたら、します」と。「それはいつですか?」と聞きたいのです。
厳しいかもしれませんが、このような姿勢では、一生、何もできないでしょう。
“今”を精一杯、充実させなければ“明日”はありえません。自分の内面をみがき向上するために、ほんの少しの時間をぜひ作って下さい。
それによって、物のとらえ方は、今までのあなたとは違ってくるはずです。
“美しく生きる”とは、究極的にはやはり、自分自身の心のありようを美しくするということだと思います。
“美しい”ということは、生半可なことではありません。
真綿(まわた)で石をみがいても丸く美しい形にはなりません。美しさとは、内に秘めた情熱や強さ、教養や知性の高さです。
毎日、自分を厳しくみがかなければ美しく輝く丸い石にはなりません。
そのためのほんの少しの「忙中閑」を作って下さいね。
みねのかすみふもとの草のうすみどり
野山をかけて春めきにけり 永福門院
和遊主宰・正冨るり子 |