美しく生きるエッセイ
◆春のおとずれ(桃の節句でおもてなし)
◆桜を思う
◆夢を紡ぐ
◆内に秘めた美しさ
◆星に願いを……
◆迎え火、送り火
◆菊の香り
◆名残り月
◆残照
◆時を紡いで
◆お愛(め)でとう 新しい年よ!
◆忙中閑
◆一期一会

茶道ちょっと知識

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美しく生きる〜和を楽しむ13章〜

時を紡いで

秋を惜しむ間もなく、冬がやって来たような今年の季節の到来で、とまどってしまいました。もう30年も昔になるでしょうか、妹と京都大原の三千院を訪れた時、赤や黄の紅葉の落葉の上に真白な雪が降りしきり、季節の移ろう美しい光景にめぐりあわせました。
自然の摂理の神秘には、いつも驚きと感動を覚えます。
どんな暑い夏があろうとも、必ず冬がやってきます。どんなに冷たい冬があっても、必ず暖かい春が訪れます。
“美しく生きる”のタイトルでエッセーを書き始めて、今年も皆様とお目にかかれるのは最後となりました。次回は、新しい年を迎えてのメッセージになります。
この1年、何かひとつ“美しくなる”実験してみましたか?
わたくしはこの秋、80歳の母と奈良ホテルに泊まり、少しだけ親孝行をしました。奈良の大仏様を母に見せたかったのです。今年は、東大寺1250年祭で、夜には大仏殿もライトアップされ、その偉大な大仏殿の御堂は、まるで御仏の後光がさしたように闇の中に燦然と輝やいて、扉の間から、大きく安らかな大仏様の顔が浮かび上がっていました。そこには、合掌して涙する母の横顔もありました。1250年もずーっとそこに座して見守っていたのですね。この日本を……。
色々な歴史を経て、長い年月を刻みながら、今も堂々と御仏は座し、人々に救いの手を大きく差しのべ、そこにある。その大仏を守り続けた人々がいて、今、ここにある。
それが人から人へと守り続けられてきたことの偉大さに、敬服と感謝の念がこみ上げてきました。そして、そこにいるだけで浄化され、生きる力を与えられる気がしたのです。
御仏に手を合わせ、御仏はもちろん多くの人に感謝できる幸せに、また感謝せずにいられませんでした。

さて、この1年間、あらゆるものに生かされてきたことへの感謝をこめて、年の瀬を有意義にすごしましょう。
自分だけの「歳末ごよみ」を作ってみるのも良いでしょう。
京都では、師走13日を境に、年用意にとりかかります。「事始め」と言います。
この1年お世話になった方へのご挨拶やお歳暮の手紙、1年間、安心して家族と食事をしたり、寝ることのできた大切な家の中のお掃除など、新しい年を迎えるためにすることはたくさんありますね。

では、そこで一番大切なことは何でしょうか?
こういう歳末の行事の中に、日本人が先祖から受け継いできた大切な心があるのです。
長い年月の時を紡いで、私たち日本人が守り続けてきたものを、いま生きている私たちが守り、次の世代に受け継がせてゆく。私たちには、その役割をす果たす大切な使命があると思っています。
まず、自分の身の回りにおいて、親からあるいは祖父母から何か伝えられたものはないかを、ひとつでいいですから探してみて下さい。そして、それを子供たちに伝えて下さい。「美しく生きる」とは、そういうことだと思います。
凛として、内に強さと優しさをたたえた人は美しい。
“人”を、“物”を、日本人として文化を大切にする人は、美しいと思います。
もっともっと、美しく生きる知恵を自分で探してみましょう。

野べみれば尾花がもとの 思ひ草
かれゆく冬に なりぞしにける      和泉式部

和遊主宰・正冨るり子

 

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