
突然、誰かが目の前で倒れたら、あなたはどうしますか? 駅構内やデパート、学校、スポーツ施設、ホテルなど、人が多く集まる場所に広く普及しつつあるAED(自動体外式除細動器)。しかし、いくら身近にあっても使い方がわからなければ意味がありません。今回私が参加した、財団法人東京救急協会主催の「上級救命講習」は、心肺蘇生やAEDの使い方、応急手当などを具体的な実習を通して学べます。まったくの初心者でも受講が可能で、受講終了時には上級救命技能認定証が発行されるのです。
財団法人東京救急協会
●AEDを救助に生かすために
心臓が血液を送り出すポンプの役目を果たせずに震えている状態(心室細動)や、心室だけが頻繁に速い動きをして空回りしている状態(無脈性心室頻拍)のときに、電気ショックを与えて心肺蘇生を行うことで、心臓の本来のリズムに戻す手助けをする装置がAEDだ。
事故やケガなどで心停止状態になった場合に、身近にAEDが設置されていることで、命が救われることも少なくない。ぜひ使用法を学んでおくべきだと思うので、簡単な流れを紹介したい。
AEDが使用可能な状況であれば、まずは電源を入れる。すると音声メッセージが流れるので、それに従って指示通りに行動すればいい。
まずは、傷病者の胸を開けるために衣服をとる。そして、2枚の電極パッドを、パッドに描かれた絵のとおり右の鎖骨の下側と左の脇の下から5センチのところに貼る。心臓をはさむような形で貼ることになる。誰も傷病者に触れないよう「離れてください」と大声で呼びかける。
あとはショックボタンを押すだけだが、直前に再度「離れてください」と声をかけ周囲を確認する。感電の危険があるため、絶対に誰も触れていないことを確認することが大切だ。ボタンを押すと、除細動(電気ショック)が実行される。実行した後に、「心肺蘇生を実施してください」というメッセージが流れるので、人工呼吸と胸骨圧迫を施す。
傷病者に何らかの変化が出るまで、または救急隊が到着するまで、心肺蘇生とADEを繰り返し行なっていくという。
●実際にできるのだろうか
救急医療を施す際には年齢区分がある。8歳以上を成人、1歳以上8歳未満を小児、1歳未満を乳児とする。乳児に対してはAEDは使用できない。
人体模型に対しての実習だったが、AEDによる処置は、施す側にとっても精神的にかなりハードなものだ。実際の現場でマニュアルどおりに救助できることが一番望ましいのだが、果たして実行できるのだろうか。いくら講習を受けたとはいえ、そのような場に自分が遭遇したら……と考えると、おそらくパニックになってしまうだろう。
そんな不安に対して講師である救命士の方が教えてくださったのは、順序を間違えてしまっても、覚えていることだけでも、“実践する”ということだ。「ためらわず迷わずに行なえばよい」との救命士さんの言葉に、励まされる思いがした。
突然の事故や病気で救急隊を呼ばなければならない事態に遭遇したら、何よりも、<助けたい、助けるんだ>という気持ちが大切であり、躊躇せずに迅速に対応してほしいという。
救急隊が到着するまでの平均時間は6、7分。3分間放置された傷病者の生存率は50パーセントに下がってしまう。1分でも1秒でも早く救命処置を行なうことがとても重要なのだ。応急手当てを学び、最低限の技術を身につけておくことで、医療従事者でない自分でも、家族や身近な人たちを助けることができる可能性があるのだ。
●命を尊ぶ心
8時間の講習では、他にも、三角巾を使った手当ての仕方や止血の方法、傷病者を安全な場所に運ぶための搬送法など、様々なことを学んだ。
学んだことを忘れないうちに、その場でテストが行なわれた。緊張しながら解答用紙に答えを書き込んでいく。
講習終了時、全員に上級救命技能認定証が手渡された。この認定証は3年間有効だ。技能を維持し向上させるために定期的に受講することが望まれる。
長時間にわたる講習だったが、決して長く感じなかった。これから生きていくうえで必要なことをたくさん知ることができた貴重な体験となった。
相手の立場に立って物事を考えることがいかに大切かを、実習を通して学ぶことができた。相手を自分に置き換えて行動する。これは、普段の生活の中でも生かせることだ。人に何かを頼むときに取る行動や態度で、相手はどんな気持ちになるかを考える。救護とは「ちょっとした心がけ」なのだという救命士の言葉が印象に残った。
今の時代、他人に無関心で、あまり関わることをしない人が多いように感じる。同じ人間同士、もっと関わっていいはずなのだ。その気持ちが人を救うことに繋がると思う。
応急手当の原点はすべての人の命を尊ぶ心から始まるのだと思った。
(スタッフ・マサ)
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