
突然、誰かが目の前で倒れたら、あなたはどうしますか? 駅構内やデパート、学校、スポーツ施設、ホテルなど、人が多く集まる場所に広く普及しつつあるAED(自動体外式除細動器)。しかし、いくら身近にあっても使い方がわからなければ意味がありません。今回私が参加した、財団法人東京救急協会主催の「上級救命講習」は、心肺蘇生やAEDの使い方、応急手当などを具体的な実習を通して学べます。まったくの初心者でも受講が可能で、受講終了時には上級救命技能認定証が発行されるのです。
財団法人東京救急協会
●いきなり上級救命講習?!
私が応急手当を習ったのは、自動車免許取得の際の一度だけ。そのときから何年も経過していたが、初心者でも上級救命講習に受講が可能と聞き、<まずは体験してみなければ!>と参加することに決めた。
受講者41名には、企業にお勤めの人、介護の現場で働く人、大学生など、様々な立場や年代の人がいた。受講者にはテキストと人工呼吸用マウスピース、三角巾が配られた。
受講はテキストに添って、ほとんどが実習形式で行なわれた。各班に分かれて人体模型を相手に、一人ずつ交代で実習していく。指導員の方の「強調して説明するところはテストに出るので良く聞いておくように」との説明に身が引き締まった。
●心肺蘇生に挑戦
最初に、「心肺蘇生」(CPR=cardio(心臓)pulmonary(肺)resuscitation(蘇生))の方法を習う。傷病者の状態が最も悪いという前提で実習が行なわれた。
傷病者を発見したら、周囲の安全を確認してから近づき、まずは肩をたたき、「わかりますか? 大丈夫ですか?」など声をかける。反応がなければすぐに大声で助けを求めなければならない。「救急車を呼んでください」「AEDを持ってきてください」など、はっきりとわかりやすく伝えること。そして、救急隊が到着するまでの間に、いかに救命行為を迅速に行うかだ。
まずは冷静になること。傷病者の体位を仰向けの状態にしてあごを持ち上げ、頭を後に反らす(気道確保)。呼吸が止まると全身の筋肉がゆるみ、舌が喉に落ちて空気の通り道をふさいでしまうので要注意だ。そして、胸腹部が動いているか目視し、鼻先に顔を近づけて呼吸の音を聴き、頬を近づけ息をしているかを確認する。普段通りの息をしていなかったら、心臓の動きを取り戻しやすい状態にするために、人工呼吸と胸骨圧迫(心臓マッサージ)を交互に実行する。
人工呼吸は、人工呼吸用のマウスピースを傷病者に装着し、気道確保をしたまま鼻をつまんで、口をすべて覆うように口をあて、胸が上がる程度まで息を2回吹き込む。胸骨圧迫は、両手を重ねて一方の手の付け根を胸骨(心臓の上にある太くて硬い骨)の乳頭線上にあて、胸部が4、5センチ沈む程度に30回圧迫する。
人工呼吸で2回息を吹き込み、胸骨圧迫を30回。これを1サイクル(2分間が目安)として5サイクル行なう。周りに人がいれば交代し、救急隊が到着するまで絶え間なく行なう。この行程をとにかく間を空けずに行なうことが重要だ。
実習では、感染症防止のためのマウスピースを使用したが、持ち合わせていない場合で人工呼吸が難しいケースでも、気道確保を行ない、胸骨圧迫だけでも施したい。
この流れを一通り実習すると汗だくになった。本当に体力のいる作業であることが身に染みて理解できた。百聞は一見にしかず。ぜひ体験していただきたいと思う。
●緊急時の大切な配慮
さらに、乳幼児に対する心肺蘇生も実習したが、子どものいる私にとっては、より身近な事例であり、知っているのと知らないのでは、大きな違いがあると実感した。
講習では、単に救命処置の手順を教わるだけではなかった。傷病者を発見した時のパニックに陥った状況のなかでも、小さな配慮が重要で、そのことによって迅速な対応がよりスムーズに実行されるのだという。
たとえば、通りかかりの人に119番通報をお願いするとする。このとき、お願いする相手に指をさして(人差し指を向けて)頼んではいけない。命令された人が嫌な気持ちになるからだ。手のひらを返して「すみません。119番通報をお願いします」と言えば、快く対応してくれる。
また、大量に出血している人に対して、「すごい出血だね」などと言えば、苦痛が軽減されるどころか、ショックで死にいたることもあるかもしれない。なるべく動揺させないように、発言にも配慮しなくてはならない。「大丈夫」「頑張って」と励ますことが大切だ。
感染症予防のために、素手ではなくビニール袋やゴム手袋をして出血の手当をすることが大切だが、説明もなくいきなり処置することで、傷病者に不快感や不安感を与える場合がある。そんなときは、「私は仕事で手が汚れたままなので、ビニール袋を付けますね」と一言伝えることで、傷病者は安心する、といったことを教えていただいた。
緊急時、傷病者の気持ちを労わることに技術はいらない。誰にでもできる大切な救命処置のひとつとして心しておきたい。
そして、いよいよAEDの実習に移る。
(スタッフ・マサ)
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