
震災の傷痕がいまだ消えない新潟県十日町市の山村では、高齢化・過疎化が深刻です。人手不足の為に満足に雪下ろしや農道・棚田の復旧作業もできず、さらに人離れが進んでいます。
今回は、震災復興支援から村興しを視野に入れた長期的サポートを行なっている特定非営利活動法人ジェン(JEN)が、「十日町市地域おこし実行委員会」と協力し実施している、池谷・入山地区の「農作業ボランティア」に参加させていただきました。
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●震災で誰もいなくなった家
草刈り作業の合間に一軒のお宅に伺った。見晴らしのいい場所に建つその家には、今は誰も住んでいない。震災によって家屋が危険な状態になり、やむなく家を離れたそうだ。
崩れた土壁をさらした蔵がそのままの姿で残り、処分しなければならない家財道具や木材が、周囲に積まれたまま雨にさらされている。
子供時代をずっとこの家で過ごしたという曽根さんを手伝い、庭先に火を焚き、不要な木材や家財道具を運び出し、燃やす作業を行なった。昔ながらの糸巻きや、結婚式に使っていたというお膳、桐のタンスや燈篭など、昔ながらの家財道具もあり、惜しみながら火にくべる。
大きな柱や梁に使った木材など、燃やせるものを次々と火にくべていくと、都会では見ることのできない大きな火柱があがる。「これ以上燃やすのは危険」と言われ、まだまだ残っている廃材が気になりつつも手を止め、<火って熱いんだなぁ。燃やすと消えてしまうんだなぁ>などと思いながら、皆でじっと炎を見つめた。
●池谷の人々との交流
最後の夜に、地元の方々との交流会が行なわれた。
この地を訪れるまでは、JENが主体の活動であり、震災の被災地でもあることから、地元の人にはネガティブな印象を描いていた。ところが、作業をともにし、いろいろなお話を伺ううち、認識を新たにせざるを得なくなった。
池谷の人たちは、70歳前後の方が多いはずなのに、農作業で鍛えられた体は逞しく、女性の肌はとても艶やかだ。男性も女性も明るく気さくで、穏やかで温かい。ふれあいを重ねるほど、陽気で楽しい人ばかりであることに気づく。
ほろ酔い気分になったところで、地酒の銘柄にもなっている「天神囃子」を全員で歌ってくださった。室内に響き渡る太く低い声。言葉を掛け合いながら展開していくその歌は、とても力強く、淡々としている。掛け合いが繰り返されるうち、池谷の人たちの心が一つになっていくのを肌で感じた。意味はあまりわからなかったが、優しく、力強く心に響く歌声に胸が熱くなった。
「天神囃子」の一升瓶を手元に置き、コップ酒を酌み交わしながら、池谷への熱い思いを語るとき、地元の人たちの瞳はきらきらと輝く。けれど、美味しい空気や水、豊かな自然といったよい面ばかりではなく、“厳しさ”も知ってほしいと言う。豊かさと厳しさの両面を理解し、その上で、この池谷の土地に暮らし、引き継いでくれる人を待ち望んでいるのだ。
実行委員長の山本さんは入山地区の出身。市内に住み会社勤めをしながら、今でも入山地区で農作業を続ける。入山が恋しくて離れられないと言う山本さんは、「田んぼはいくらでもあるんだから」と訴える。深刻な池谷地区の過疎を食い止めるため、日々、地域おこしに奔走しているのだ。
●ブナ林に癒されて
池谷には、地域の人たちが共同で管理し大切にしている約12000坪のブナ林がある。軽トラックの荷台に乗せてもらい、参加者全員でそのブナ林を訪ねる。途中、「この水を使ってすべての稲を育ててるんだよ」と教えてもらった湧き水を飲ませてもらう。とても美味しい。
車を下り、歩いて山間を進むと、地面がフカフカした感触に変わってくる。積もり積もった腐葉土は柔らかい絨毯のよう。よく見ると、茶色い小さな実が無数に落ちている。ブナの実だ。その周囲で顔を出したたくさんの新芽が、鮮やかな青緑色を放つ。気がつくとあたり一面に、ブナの木が生い茂っていた。
不ぞろいの木々たちは自由に立ち並び、降り注ぐ雨を気持ちよさそうに浴びている。見上げると、長く延びた木々の合間から柔らかい光がさしている。
ぶなの木に耳をあてると水の流れる音が聞こえるという。抱きつくようにして木肌にそっと耳を押しあてる。雨音に消されてわからなかったが、なんだか、ブナ林の一部になったような気分になる。そんな空間で、参加者は束の間のひとときをゆったりと過ごした。
ふだん味合えない自然の醍醐味を体中で感じた参加者は、皆、充実した4日間を過ごしたと思う。手助けに来たはずが、逆に自分たちが癒されてしまったのは、豊かな自然と、地元の人たちの温かい心遣いをいただいたお陰だと思う。代わる代わる差し入れてくれた、あの漬物や煮物の味は忘れられないだろう。
「この4日間で何か役に立てたのだろうか」
「地元の人たちに、喜んでもらえたのだろうか」
そう考えると心もとない気持ちになるが、この土地の温かさを心に刻み、友人に伝え、また訪れることで、少しでも恩返しになればと願う。
<本当にお世話になりました。また、会いにいきます!>
(スタッフ・まー)
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